日本財団

在宅ホスピスHOSPICE CARE AT HOME

在宅ホスピスについて

ホスピスという言葉の定義は統一されていません。一般的には、人生の最期に向き合う人々に対するケアや、そうしたケアを行う施設のことを言います。

同じような使われ方をする言葉には、緩和ケア、ターミナル(終末期)ケア、エンドオブライフケアなどがあります。緩和ケアは、WHOの定義では「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチ」とされています。注目すべきは、「クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善する」、つまり、いかに生きるかに主眼を置いているということです。

ホスピスケアにおいては、医療と生活、両面のケアが必要です。完治する怪我や病気に対して一定の期間だけ治療をして元の生活に戻っていくのではなく、生活の流れの中で最期まで豊かに生きるためのものだからです。また、ホスピスケアには、身体的だけでなく、本人やその家族の悲嘆や苦悩に対する精神的・心理的なケアも含まれます。

在宅ホスピスのイメージ

日本では、2007年にがん対策基本法が施行され、緩和ケアの位置づけがなされると、緩和ケアは主に病院で専門的に行われるようになりました。一方で、半数以上の人々が、最期は住み慣れた場所で迎えることを望んでいます。現在は8割の人が病院で亡くなりますが、近年の調査によると、最期まで自宅で暮らしたいと願う人の割合は6割を超えています*。そこで注目されるのが、自宅や住み慣れた地域で終末期を過ごすことを支える「在宅ホスピス」です。

在宅ホスピスには、医師や看護師が自宅に来てくれる訪問診療・訪問看護、ヘルパーが日常生活を手助けしてくれる訪問介護などが欠かせません。地域生活と真摯に向き合い在宅ケアを支えてきた医療・介護関係者が、各地で力を尽くしています。あるいは、自宅に住み続けることが難しい人でも、地域に支えられて暮らせる場があれば、自分らしい生活の中で最期を迎えることができます。例えば、ごく普通の民家で擬似家族のように暮らせる「ホームホスピス」などの仕組みが少しずつ生まれています。在宅ホスピスのニーズは今後ますます高まることが予想され、こうした取り組みも広がることが期待されます。

*厚生労働省「終末期医療に関する調査」(2010)より