日本財団在宅ホスピスプログラムについて

関係者の声

関係者の声:在宅ホスピス実践リーダー養成プログラム 研修受入機関「かあさんの家」指導責任者 久保野イツ子さん

ホームホスピス「かあさんの家」は、2013年からはじまった日本財団の在宅ホスピス実践リーダー養成プログラムの研修受入施設として、年間3人を目処に研修生を受け入れてきました。

研修期間は一人6ヶ月。彼らの教育担当は久保野イツ子さん。ホームホスピス宮崎の副理事であり、宮崎県看護協会で活躍され、退職後は、九州保健福祉大学総合医療専門学校の副校長に。そして、今、「かあさんの家」でスタッフの一員として手伝いながら「かあさんの家」のお母さんの役割を果たしておられます。

お忙しい久保野さんに時間をいただき、お話をうかがいました。

Q:今まで何人の研修生を引き受けてこられたのでしょうか。

今研修中の人も含めると、12人、地域でいうと9箇所。そして、そのうちの3地域がすでに開設、開設の目処が立って準備中のところが3地域、あとの3地域は、仲間づくり、地域づくりをしながら、開設に向けて努力しているところですね。

 

Q:どういう職域の方が受けられるのでしょうか。

看護師、介護福祉士、それから作業療法士の方ですね。研修を受けるには、それまで何年以上勤めてきたという実績を問われるから、それぞれ専門職として頑張ってこられた人よね。

 

Q:研修期間は6ヶ月?

そう。だから、人によっては、それまでの仕事を辞めて、研修を受けにきておられ、ここで、一人のスタッフとして、一から学んでいくわけだから、皆さん、覚悟があって宮崎までこられるんだと思うのよ。

Q:研修生は主にどういうことを学ばれるのでしょうか。カリキュラムがあるのでしょうか。

ありますよ。リーダー養成研修のお話をいただいたときに、私は看護協会にいたとき、訪問看護師養成講習会のためにつくったカリキュラムの応用がきくと思ったんですよ。実際、役に立ちましたね。

研修生はスタッフとともに個別ケアを実践すると同時に、サービス提供者としてマネジメントも学んでもらう。ホームホスピスは、現場には継ぎ目はないけれど、保険上はフォーマルとインフォーマルを使い分けるから、診療報酬の上げ方は通常の介護施設と違ってくるんです。

ホームホスピスの仕組み、運営のノウハウ、契約関係なんかハード面は別枠を設けてレクチャーする。事務所でかあさんの家4軒全体の管理者の祐末さんがみっちり教えます。

現場では、ご家族との接し方や医療との連携の仕方、看取りの場に携わることもありますよね。

Q:相当、鍛えられますね。

そうねえ、原則、日勤は二人、夜勤は一人だからね。昼間は、半分の責任を負うし、夜は全部でしょ。とくに夜勤は緊張するよね。このあいだも、今来ている○君が初めての夜勤だったから、祐末さんが「月見ヶ丘」まで様子を見にいってましたよ。研修生は、側にスタッフがいてくれるだけで安心だからね。

Q:皆さんの守りもあついんですね。

それはそうよ。いつだって連絡してくれたら誰かが走って行くしね。一人にしない。

Q:6ヶ月間は長いですか?

最初のうちは、「ああ、やっと一ヶ月過ぎた」「二ヶ月過ぎた」って思っているようだけど、三ヶ月過ぎた頃になると、「ああ、もう三ヶ月しかない」「一ヶ月しかない」って変わってくるようよ。

Q:その間は、無給になるのでしょうか。

いえいえ、日本財団の助成金から給料を出すし、年金や社会保険もつける。そのほか、家賃補助もします。

Q:研修を受ける側からすれば、とても恵まれた条件の研修のように思うのですが、申し込まれた方すべてを受け入れるわけにはいかないですよね。どのような方を選ばれるか、判断基準はありますか。面接はされますか。

もちろん。書類選考のあと、私や市原さんが直接会ってお話をききますよ。

やさしい眼差しをもって、利用者さんに声をかけることができる方。そしてケアの仕事が大好きな方がいいよねって(笑)。

でも、はじめた頃から少しずつ変わってきたのだそうです。

最初のころは、人柄重視ですよ。ああ、こんな方なら、ホームホスピスを始めるのにいいだろうなあって。書類を見ているから、その方の経歴や目指していたことはだいたいわかるでしょ。

やる気も十分。モチベーションもある。中には、もう家まで確保できているという方もいました。

でも、最近は、その方に仲間がいるかって、まず考えるようになった」という久保野さん。一人では限界があるといいます。

それから、その方がホームホスピスをつくりたいと思っている地域に、訪問してくれる医師、訪問看護ステーション、緊急時に受け入れてくれる病院、そうしたバックアップがあるか。言い換えれば、その地域にホームホスピスを中心において地図が描けるか、それを問いますね。

ないようであれば、「あなたは、地域に帰って、その地域を耕すことが先ですよ」と言って帰します。

そして、大事なのが資金力。

ホームホスピスは収益事業ではありませんが、保険報酬は一部しか使えないので収支は非常に厳しく、はじめに運営資金がなければつづきません。始めたらその月から、ヘルパーさんにお給料を支払わなければなりません。利用者のお食事は毎日作らなければならないし、水道光熱費もかかります。

ふつうの家だから、当然のことよね。実際、介護保険の報酬が入ってくるのは、開設して三ヶ月あとから。その間は、自力でもちこたえなければならないのよ。

そういう意味でも、一緒にやってくれる仲間は必要だと思う。

Q:最近の研修生は仲間がいる方ですか。

ホームホスピスをつくろうという意思を持った活動母体があって、そこからくる人が多くなったかな。だから、必ずしも管理者ではないのよ。ケアリーダーであったり、その人を補佐する人であったりする。

Q:実際に研修を受けて、ここで学んだこと、体得したことが、自分の地域に戻ったとき、仲間との間に意識の差が出ませんか。

それはあると思う。その地域、その地域で環境も事情も違うんだから、ここで学んだことがそのまま適用できるわけがない。当然ですよね。

こないだも、修了した研修生が現場で悩んでね。電話をしてきたから、時間があればここにいらっしゃいって。幸い管理者がよく理解してくださっている方だったから、休みを利用してやってきましたよ。

馴染みのスタッフ、馴染みの利用者さんがいる中で、いろいろ悩みを話して、少し元気になって戻って行きましたよ。

Q:フォローアップが必要ですか。

そう、それは必要だと思う。6ヶ月間、ここで学んだから、あとは自分で考えてやりなさい、とは言えないもの。預かる側の責任もあると思う。

研修生の同窓会のようなものがあればいいと思うのよ、うちだけじゃなくてね。お互いの悩みを話し合う場があればいいと思う。

ホームホスピス協会の仲間うちでは「赤ペン先生」と呼ばれる久保野さん。研修生の日誌に、毎日、丁寧に目を通し、感想を書いて返していらっしゃいます。最初のうちは、おざなりになりがちな日誌が、途中からだんだん変わってくると言います。

自分が思い描いていたケアと現場との落差に自信をなくして落ち込んだり、悩んだり・・・、次第に書き込みも増えていきます。それが途中から、少しずつ変わってくる。小さな気づき、小さな触れ合い、小さな成功、なによりも現場の様子が手に取るようにわかり、研修生の成長が見ていて楽しいと言う久保野さんです。

自分でもすごいなあと思うのは、研修を修了して帰る時、利用者との契約書のフォーマットから何から、「かあさんの家」のノウハウをすべて含めてUSBメモリに入れて渡すこと。「帰ったら、これを自分の地域に合わせて使いなさい」って。みんなで応援していますよ。

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