日本財団在宅ホスピスプログラムについて

関係者の声

関係者の声:研修を受けて:在宅ホスピス実践リーダー養成プログラム 研修修了者 羽太嘉一さん

「訪問看護師になろう」、そう思った羽太嘉一さんは、2015年4月から9月までの6ヶ月間、福岡市の「訪問看護ステーションはな」で研修を受けました。そして、9月にNPO法人を設立し、11月には訪問看護ステーションOhanaをスタートさせました。

お話をうかがっていると、まるで「開け、ゴマ!」と言うと、羽太さんの前に次から次に扉が開いていったように見えます。

 実際のところはどうだったのでしょう。

 羽太さんのお話をうかがう前に、研修指導者である「訪問看護ステーションはな」の平野頼子所長の感想をおききしました。

Q:女性のほうがいいんだけど、とおっしゃったようですが。

平野:ああ、それはね、利用者さんの中には、男性に抵抗感がある方がいらっしゃるんですよ。例えば、お風呂に入れてもらうとか、着替えとか、陰部洗浄とかもあるでしょう。

女性の看護師のほうが、そういう抵抗が少ないのよね。だから、男性の場合、担当する利用者さんをある程度選ばないといけなくなるのよ。

 

Q:在宅ホスピスリーダー実践養成プログラムの研修生受け入れはこれまで何人ですか。

平野:今、2人。羽太君はとっても真面目で、素直で、一所懸命な熱意が伝わってくる青年。看護師としては、病院でしっかりやってきていたから、病院と在宅の違いを学んでもらうようにしました。それから、研修と併行してNPO法人を立ち上げたり、研修が終わると訪問看護ステーションをスタートさせて管理者になるから、レセプトや報告書の書き方、それから制度のことについては、一から教えんといけなかった。だから、結構忙しかったでしょうね。

病院と在宅の違いは大きいと思われます。羽太さんにうかがいました。

 

Q:病院と在宅の違いを感じられるのは、どういうところですか。

羽太:病院は、患者さんが治療をお願いするところで、在宅の場合は、こちらがお邪魔するところですよ。病院と家の中では時間の流れも全然違うけんですね。ゆったりした時間の中で、いろんなお話ができますよね。

なんてこともない他愛のない話、昨日あった野球の試合の話とか、そんなことですよ。

使用する物品も違うからですね。その家に防水シーツがなかったら、台所からゴミ袋をもってきて敷いたりですね、陰部洗浄にはペットボトルに穴を開けて使ったり、病院だったらオムツなどは処理室に持っていけばいいんだけど、家だと匂いを消すためにも新聞紙に包んで捨てるとかですね、そんな工夫があるんだなと。

はなのベテランの訪問看護師さんに、本当に手取り足取り教えてもらいました。

 

Q:ベテランの看護師さんとかいうと、厳しそうに聞こえるんですが。

羽太:いや、皆さん、やさしかったですよ。ただ、あくまでも利用者さんの側に立って細やかな配慮することについては、厳しく教えてもらいました。例えば脊損の方は、ほんの1センチ身体の位置がズレても、ご本人にとってはものすごいズレに感じられるんですよ。その辺の、利用者さん側の感覚とか。ターミナルの方の清拭のあと、すぐに乾いたタオルで拭いて気化熱で体が冷えるのを防ぐとか、そんな時、できるだけ素早く、相手の方に極力負担をかけないようにするとか、そうじゃなくて、やさしく丁寧に時間をかけてするケアとか。

Q:羽太さんご自身はどういったところに注意されましたか。

羽太:環境整備ですかね。環境整備は病院でも、看護師が第一に注意することですけど、病院の場合はベッドの周辺になるけど、在宅は、その方の寝ていらっしゃる部屋全体になるけんですね。老老介護のお家で、ご主人が脳梗塞の後遺症で寝たきりなんですよ。夏場でエアコンを使ってあったんですけど、フィルターの掃除まで奥さんの手が届かないから、椅子を持ってきて取り外して洗ったりですね。埃で真っ黒になっていたけど、そういうことで肺炎になったりするからですね。

もっと直接的に、老人ホームに入所されているところに行きよったんですが、その方が、夜間睡眠時の無呼吸症候群でマスクをしておられるとですけど、しょっちゅう、肺炎を起こされるんですよ。それは、そのマスクが汚れとって、行くたびに綺麗に洗っていたら、肺炎を起こすことがほとんどなくなりましたね。

それから、お家ですから猫や犬を飼ってあったりするでしょう。とくにお年寄りにとってペットは家族同然ですから、大事にされてる。その毛があちこちにくっついとうとですよ。だからいつもコロコロを持って行って、きれいにしたりですね。家ならではの環境整備です。

 

Q:その他は?

羽太:やっぱり小さいお子さんのお家ですかね。お母さんは、なんでこんな病気になったんやろうか、とか、どうしてこんな病気で生まれてきたのとかですね、きっと話したい気持ちはいっぱいあるんでしょうけど、話す相手がいない。昼間は、夫は仕事に出て一人ということが多いからですね。

子供さんのためにがんばっていろいろやりたいという気持ちはあっても、なかなか気力がわかない。そんな方のお話を聞いて、「これからもみんなが支えていくから」、「一人じゃないよ」って伝えたりすることもありますよね。こちらが何も言わなくても、向こうから話してくださることが多いですね。

 

Q:病院と在宅、どこがいちばん違うと思われますか。

羽太:時間ですかね。病院はともかく時間に追われるから、話す時間はもちろんだけど、触れる時間も少ないですよ。その方の手や足にふれて、冷たいからちょっと循環が悪いんじゃないかとか気を配ることができますよね。

マッサージやストレッチをすることもあります。リンパの流れが悪くて、脚がパンパンにむくんでおられる方とか、丁寧にマッサージをして体幹流していくようにするとむくみがとれてきて、自分の脚で歩けるようになるんですよ。歩けるようになると筋肉も付いてくるから、腫れもひいていきますしね。そんな時間がとれますから、やっぱり時間ですかね。

Q:研修期間6カ月は長かったですか。途中で、このまま訪問看護師になることを迷ったりしませんでしたか。

羽太:あっという間の6ヶ月でした。一日一日が勉強でした。迷いは一切なかったです。

 

Q:研修を終えられて、訪問看護ステーションOhanaのスタートまであまり時間がなかったのではありませんか。

羽太:そうですね。でも、「はな」さんで日常業務に必要な報告書の書き方やレセプトの上げ方なんか事務的なこともすべて教えてもらいましたから。スタートした後からも、わからないことは、平野さんに教えてもらったりして助けてもらっています。

 

在宅を守る仲間に新たに加わった、若い訪問看護ステーションOhana。そのOhanaに対して、羽太さんを育ててくれた研修機関「訪問看護ステーションはな」をはじめ、にのさかクリニックや「ちいさなたね」などからの惜しみない支援は、研修後もつづいているようです。

(取材日:2016.12.12)

BACKNUMBER

PAGETOP