日本財団

在宅ホスピスHOSPICE CARE AT HOME

にじいろのいえ vol.2

ALSという病

ALSとは、徐々に運動神経細胞が侵されていく病で、難病に指定されています。損傷されるのは運動神経細胞で、手足や顔などの筋肉(随意筋)が自分の意思で動かせなくなりますが、自律神経は侵されていないので、痛い、かゆい、熱い、冷たいなどの感覚は残るため、本人にとって大変つらい状況であり、病が進行すると瞼を開くことができない、しゃべることができない、そして自発的な呼吸ができなくなります。

本人だけでなく家族にとっても大変つらい病で、一般に介護者にとっても医療ニーズが高く難しい病と思われます。さらにALSの場合、呼吸筋が侵されますから、気管切開して人工呼吸器を着けるか着けないか、それはつまり命を延長するか病の進行に抗わないかという選択で、本人にも家族にも、大きな決断が迫られます。それを支えるのも介護者です。

Q:病院に入院しているALSの方は、体位交換を求められたり枕の位置が5ミリ違っていてもつらいと訴えられたりと、5分おきくらいにナースコールがあるため敬遠されがちときいたことがあります。夜勤1人では大変ではありませんか?

今野:それがあまり困らないんですよ。私がケアマネをしていたときは、たしかにそう聞いていたけど、ここは夜、皆さんよくやすんでいらっしゃってあまりないですねえ。ちょっと体調が悪くて落ち着かなかったりして大変な日もあるけれど、ずっとじゃない。夜勤の仕事は就寝介助とオムツ交換、トイレ介助、雑務、体位交換くらいです。

Q:皆さん、本当に医療ニーズが高い方ばかりですね。

今野:にじいろのいえは介護職員ばかりでやっているので、よく「怖くないですか」と訊かれますが、家でみるのは家族でしょ? そう思えば何も特別なことじゃない。私たちにできないことはない、と思うんですよね。外部の医師や看護師さんが24時間対応してくださいますので。

Q:スタッフから不安の声は出ませんか?

今野:みんな覚悟ができているんでしょうね。私と堤(主任)が学会か何かで外に出ていたとき、自宅でみておられた主介護者のご主人が倒れて、緊急にALSの方をお預かりすることになったことがあります。そのときも電話で事情を話すと、スタッフがさっと段取りを整えてくれたんですよ。電話の向こうで「せめて来られる方が男性か、女性かくらい教えてください」って言われたけれど。今まで不安を訴えられたことはないですね。度胸があるんですよね。

と笑う今野さん。

 普通の家で家族が介護するようにALSの患者さんや頸椎損傷の人をみる、人工呼吸器を着けていても着けていなくても。そして最後まで手放さない。にじいろのいえでは、それは特別なことではないようです。

お話をしているリビングの隣の部屋では、住人のベッドに上がって、背中のマッサージをしている女性がいます。

Q:理学療法士さんですか?

今野:彼女は訪問マッサージ師です。鍼灸士の資格ももっています。月曜日から土曜日まで入ってもらい、ALSの方には毎日入ってもらっています。

Q:訪問マッサージ? 理学療法士とは別に?

今野:はい、彼女たちはマッサージ師の資格を持ったプロです。このあいだ、堤が数えていたんですが、うちは3箇所の訪問診療と3箇所の訪問看護、2箇所の歯科医や眼科、訪問リハビリなど17の医療機関と、福祉用具の会社、訪問入浴、呼吸器や酸素の会社など19の介護事業所が入っています。私たちだけじゃ手が回らないところは外に頼みます。ケアマネも外の方が入っているし、外部のヘルパーにも入ってもらっています。

Vol.3 へ続く