日本財団

在宅ホスピスHOSPICE CARE AT HOME

とも暮らしの家・・・愛逢の家 vol.3

家も含めた人と地域のつながりの環境を守るのが僕の仕事

 最後にその晩、夜勤を控えた西山さんにお話をうかがいました。愛逢の家の現場をまとめているのが大森さんとすれば、家全体の管理をするのが西山さんです。
 見た目はまだ学生で通じそうな西山さんですが、愛逢の家に勤めて7年になります。
 4年目にして管理者を引き受けたのですが、「今、思えば怖いもん知らずだった。わからなかったから引き受けたんだと思います」と。兼行さんが西山さんに託したのは、その真面目さと若さのもつのびしろだったのかもしれません。こちらの質問にも口ごもりながら丁寧にこたえてくれます。

Q:今、ホームホスピスの仕事にピタッと合った感じですか」

A:合ったんですかねぇ、まあ、合いつつあるかもしれません。ホームホスピスってこともあるんですけど、面白くなりつつある・・なってるとも思います。・・・その途中かな。

Q:ホームホスピスは地域とのつながりを大事にしていると聞いています。さきほど長谷川さんの話に「看取りの伝道師」という言葉が出てきましたが、西山さんは看取りについて、どう考えていらっしゃいますか。

A:僕は看取りって特別なこととは考えてなくて、本来、看取りって日常の延長かと思うんです。でも、大切なことで、ふだんからの人と人の関わりがあって、その積み重ねがあって看取りがあるんやと思うんです。だから、伝道師とまでは思わなくて。ただ、看取りについて何も知らない人や困っている人がいるから、それは伝えていきたいなと思っているんです。

Q:西山さんの目標はなんでしょう?

A:今は、若い世代を中心に、全ての世代に “みとりを身近に”感じてもらえるような活動や話し合いの場、関わり合いの場をつくること。そして“介護はおもろい、福祉は楽しい、看取りはあったかい”こと、愛逢の家や尼崎で感じていることを伝えたいと思ってるんです。

そして「仲間とともに活動していきたい」そうです。

Q:ところで、西山さんのお仲間とは?

西山さんが実行委員をする「みとりまちプロジェクト」は、尼崎をみとりのあるまちにしていこうという活動で、医療・介護・福祉関係者はもちろん職種に関係なく一般市民や学生がともにこのまちでどう生きるか、どう逝くかを考えていこうとする市民運動です。10代の人からシニア世代まで幅広い世代の人が参加して、講演会やディベートなどを活発に開き、尼崎全体の健康度を高く持ち上げているように思えます。西山さんは、市民が交流する土壌が今できつつあることを実感しています。その中で西山さんも、ホームホスピスや愛逢の家に携わる立場として例えば看取りについて伝えたり、支援したりしていきたいと思っているそうです。地域全体のダイナミズムを体感する中でより広い視野を培われ、西山さんの中でホームホスピスや愛逢の家の役割、自分自身の管理者としての仕事が見えてくるのかもしれません。

A:僕の仕事は、この家も含めた人と地域のつながりの環境を守るという感じかもしれません。ここ(愛逢の家)に住むことを選ぶ、最期までここで暮らし最期まで生きるということを決めていく、ここがそういう場所なんだということを住人も家族もスタッフも地域の人も理解して、目的を共有することができたら、あとはその人の希望や状態に応じて、人であったり支援であったりをつなげたらいいんだ、ということに去年の終わり頃に気づいて、だいぶ楽になったんです。だから今、僕の管理者としての仕事は、5人の住人さんが最期までここで普通に暮らし続けることができる環境を整えることかな。

と言葉を選び選び、こたえてくれました。

 愛逢の家に午後の数時間お邪魔して住人の方と会い、ここに関わる家族やスタッフ、ボランティアの方と出会いお話をきくうちに、「とも暮らし」という言葉がいちばん馴染みそうな気がしてきました。「実家です」というスタッフや家族、みんなの生活の一部であり、そこにいるだけで互いの温もりを分かち合う家、それらが温かな余韻として残りました。